2020年答弁記録

1.障がい者就労施設への発注拡大について

【大 石】

 

障害のある方がグループホームなどを利用して地域で自立した生活を送るには、約3万円の工賃が必要である。国や地方公共団体は、障害者就労施設等から優先的に物品等を調達するよう努めているが、工賃向上を図るためには、行政だけでなく、企業や県民など、全県を挙げて取り組まなければ、目標達成は難しい。

 

また、障害のある方は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、3密を避けつつ一生懸命働いているが、これまで仕事を発注してくれていた製造業等の事業縮小やイベントの開催中止等により、生産した雑貨や食品などを販売する機会が減少している。

 

行政として力を入れるべきところは、障害のある方々の働きたいという意欲に応え、企業や県民の協力も幅広く得て、障害者就労施設等への発注拡大に取り組み、それにより工賃収入の増加に繋げていくことではないかと考えるが、県の所見を伺う。

【出野副知事】

 

障がい者就労施設への発注拡大についてお答えいたします。

 

障害のある方々が住み慣れた地域で自立した生活を送るためには、経済面でも自立が必要であり、県では、県民の皆様に障害者就労施設で生産された製品である「ふじのくに福産品」の継続的な購入を呼び掛ける「一人一品運動」を展開しております。

 

今年度は、「地域の障害者就労施設は地域全体で支援」する仕組みの構築を目指し、浜松市、富士市をモデル地区に、市町や企業と連携して地域の特産品を活かした製品開発や販売促進の支援を行う「地域密着型」のふじのくに福産品一人一品運動に取り組んでおります。

 

また、県内各地に配置している障害者働く幸せ創出センターのコーディネーターが、市町や企業等を幅広く訪問し、福産品の販路拡大を図るとともに、施設への製品や作業の新たな発注の呼び掛けや、企業のCSR活動とのマッチングを行うなど、福祉と企業、地域をつなぐ取組を行っております。

 

来年度は、コロナ禍における新しい生活様式に対応した福産品の新たな販売方法として、オンライン販売への参入を促進することとし、希望する施設に対して、アドバイザーの派遣や導入経費の支援などを行ってまいります。また、今や全国ブランドとなった「久遠チョコレート」のように、消費者が望み、魅力あふれる「売れる商品」、いわゆるスーパー福産品を開発、生産、販売するために、県内3事業所程度をモデル事業所として選定し、商品開発等の専門家を派遣することとし、これらの事業の予算案を本会議でお諮りしているところでもあります。

 

県といたしましては、今後とも、市町や企業などと連携し、障害者就労施設への発注拡大に取り組み、障害のある方が働き続け、経済的な安定の確保はもとより、社会の一員として、生き生きとした生活が送れるよう、共生社会の実現を目指してまいります。

2.新規就農者の確保に向けた具体的な取組について

【大 石】

 

令和2年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」では、「我が国の農業を支える基幹的農業従事者は年々高齢化するとともに、今後一層の減少が見込まれることから、農業の持続可能性が懸念される地域が発生するおそれがある」としている。

 

また、令和2年11月に公表された「2020年農林業センサスの結果概要」では、本県の農業経営体数は、5年間で21%の減少となっている。

 

一方、新規就農者の就農形態は多様化し、非農家出身者による自立就農と、農業法人へ就職する雇用就農が、県の新規就農者数全体の8割程度を占めている。

 

非農家出身者が自立就農を目指すには、設備や機械等の初期投資の負担が、大きな参入障壁となっている。

 

また、新型コロナウイルスの影響で、地方への回帰の流れや、働き方を見直す流れが生じている中、農業分野に関心を持つ県内外の様々な人々を、新たな農業労働力として取り込んでいくことも必要である。

 

本県農業の持続的な発展のためには、自立就農や雇用就農における個別の課題に対して、タイミングを逸することなく、きめの細かい支援を行って、新規就農者を幅広く確保することが重要であると考えるが、県の所見を伺う。

【農林水産担当部長】

 

新規就農者の確保に向けた具体的な取組についてお答えいたします。

 

本県の新規就農者は、平成28年の334人をピークに、その後は年間300人を下回る水準で推移しております。一方で、コロナ禍の影響により、本県への移住や県内での転職を考えている方もおりますことから、本県農業の働き手として、積極的に受け入れる体制を整えていくことが重要であります。

 

県では、これまでも農業経験のない若者等が新規就農に至るまでを一貫して支援するため、段階に応じたきめ細かな支援を行うとともに、雇用就農の促進を図ってまいりました。しかし、資金不足を理由に自立就農を断念する場合や、年齢を理由に法人に雇用されない場合もあります。

 

このため、令和3年度から、自立就農希望者への支援といたしましては、若者等の初期投資に掛かる負担を軽減するため、中古ハウスや付帯設備、中古機械の導入経費に対しても補助してまいります。

 

また、雇用就農希望者への支援といたしましては、幅広い世代の雇用の機会を確保するため、49歳以下を対象とする国の補助制度に加えまして、50歳から64歳までの方を農業法人等が雇用して農業研修を行う場合に、その研修費用を補助することといたしました。

 

県といたしましては、これらの取組により、本県農業を担う新規就農者を幅広く確保し、本県農業の持続的な発展につなげてまいります。

以上であります。

3.コロナ禍における水産業の振興について

【大 石】

 

新型コロナウイルス感染症対策による外出自粛等により、水産物については、県を代表する魚種であるキンメダイ等高級魚やウナギ、マアジなどの養殖魚出荷が滞り、大きな影響があった。

 

本年1月以降、首都圏などで2回目の緊急事態宣言が発令され、遠州地域の特産である高級魚のトラフグを始め、養殖魚のウナギなど生産者に大きな影響が出ている。

 

水産加工品についても、業務用の商品の売り上げが激減しているが、小規模事業者が多いため、新たな商品を開発するのに、支援が必要である。

 

流通面でも、首都圏の既存の市場が低迷する中、別の販売ルートの構築が必要となっている。近隣の山梨、長野県では感染者数が少なく、首都圏を中心にした流通だけに頼らない、新たな販売先の開拓もするべきだ。

 

緊急事態宣言下において、感染者は減少傾向にあるが、新型コロナウイルスの変異株が見つかるなど、予断を許さない状況が続いている。

 

これまでに実施してきた水産業への支援の内容、そして今後の振興策について、県の所見を伺う。

【川勝県知事】

 

大石哲司議員にお答えいたします。コロナ禍における水産業の振興についてであります。

 

県では、新型コロナウイルス感染症の拡大により痛手を受けた経済の活性化、再生に向けて、地域主導型の経済政策「フジノミクス」を展開いたしております。特に、現在は、新たな「山の洲(くに)」広域経済圏の形成を進めているところであります。域内の財やサービスを、域内の住民が買い支える取組でございまして、これは生産者を助ける「利他」の行為であると同時に、買う人にとっては美味しい地元の産品を得られるということで、楽しい「自利」行為でもあります。

 

その嚆矢として、一番最初の試みとして、実施いたしました、県産農水産物や加工品の消費喚起に向けた取組である「バイ・シズオカ」、そして、「バイ・ふじのくに」におきましては、水産物につきましても、「しずおか 手しお屋」等の通販サイトの活用によりまして、巣籠もり需要に対応した販路拡大を行ってまいりました。

 

さらに、山梨、長野などの「山の洲(くに)」圏内に店舗を展開するスーパーとの連携による販路拡大や、全線開通が予定されている中部横断自動車道を活用した直送のルートの開拓に取り組んでいるところであります。また、鮮魚の高鮮度供給モデル事業によりまして、ITを活用した情報や物流のネットワークを構築し、飲食店グループやJAが運営する農産物直売所などの新たな需要を開拓してまいります。

このほか、水産物の大きな需要先でもある外食、観光産業において消費が低迷している状況を踏まえまして、内食需要にも対応するため「水産イノベーション対策支援推進事業」により、事業者等の販路開拓や新商品開発等を支援しております。さらに、ウナギやマダイなどの養殖魚の需要が低迷し、在庫が増えておりますことから、県内の小学校、中学校等の学校給食へ提供する取組を行っております。

 

感染症拡大で、売上げ減少の影響を受けた県産水産物の需要先確保のため、滞留在庫となった養殖魚等を小中学校等の学校給食に提供するとともに、子ども達に県産水産物の美味しさや魅力を伝えたということで、計493校、延べ約58万食を提供したということでございます。

 

先般、漁業にお詳しい藪田議員が、水産関係者と知事室にお見えになられまして、水産関係者が給食の現場を見て、そして、子ども達がお魚を全部、残さないで食べているところを見て、たいへんうれしかったと感激されたということでございました。

 

今回、令和2年度2月補正で2億円を予算化しておりまして、令和3年度も同様に実施予定でございます。

 

これは食育にも資するもので、愛飲条例をこちらでお認めいただいて、今、実施しているところでございますけれども、こうした、土地のものを、新鮮な食材を、特に水産物、水産王国でございますから、これが、今回のコロナ禍のみならず、コロナが終息した後も、そうした試みが継続的に行われるようなシステムができないものかと、いうことで、これから私は、教育委員会などにも御相談申し上げて、子ども達に、県の誇る水産物を提供できるようにしていきたいと考えているところであります。

 

このような県産水産物への需要の拡大策に加えまして、水産関連事業者による販売促進の取組を支援することが重要です。感染症予防の徹底を前提にいたしまして、水産物の消費拡大に向けた水産祭り、あるいは、即売会などの開催を支援してまいります。

 

県といたしましては、こうした取組により、関係団体とも連携しながら、コロナ禍の影響を受けた水産関連事業者を支援してまいりたいと考えております。

 

なお、その他の御質問につきましては、副知事、関係部局長及び教育長から御答弁申し上げます。

4.安間川上流部における治水対策について

【大 石】

 

浜松市東部を流れる安間川では、河川整備が進んでいない上流部において、短時間に大雨が降ると住家の浸水や道路冠水が頻繁に発生し、住民の生活に支障をきたしている。上流部まで河川改修が進むには時間がかかることから、住民は1日も早く効果的な治水対策が講じられることを切に望んでいる。

 

令和元年12月定例会における安間川上流部の治水対策についての質問では、既存の学校の校庭や公園等を活用した貯留施設の整備などの実現性に関する調査に着手したとの答弁があった。また、令和2年12月定例会における「流域治水」の取組についての質問では、県や関係市町により設置する「流域治水協議会」において、流域の地形や土地利用の状況等を踏まえた実効性のある対策メニューを決定していくとの答弁があった。

 

河川の改修工事まで、長期の年月を待たざるを得ない一方で、現実に浸水被害が頻発している当地域において、今後の気候変動による降雨量の増加などへの対応も踏まえつつ、局地的な浸水被害への対策について、今後どのように取り組んでいくのか、県の所見を伺う。

【交通基盤部長】

 

安間川上流部における治水対策委ついてお答えいたします。

 

安間川では、住宅等が多い中流域で浸水被害が頻発していたことから、安全性を早期に向上させるため、中流部に計画した遊水地を先行して整備し、平成30年5月から供用を開始いたしました。現在は、計画に基づき、下流部の安間川橋付近から上流に向けて、河川改修を進めております。

 

一方、近年浸水被害が発生している上流部につきましては、本年1月に県及び浜松市が設置した「浜松市域流域治水対策推進協議会」におきまして、昨年度から実施してきた雨水貯留の候補地調査の結果なども踏まえ、下流からの河川改修を待つことなく、上流部での効果が期待できる治水対策メニューの検討を進めているところであります。

 

具体的には、狭窄部となっている万斛橋周辺におきまして、橋梁の架け替えを含む河道の整備により、出水時の水位を下げる効果が見込めることを確認しております。また、上流域にある笠井小学校や笠井中学校の校庭等を活用した雨水貯留施設の整備について調整を進めているところであります。これらの検討結果を、来年度半ばを目途に取りまとめる「水災害対策プラン」に反映させてまいります。

 

県といたしましては、安間川上流域における効果的な河川整備を着実に実施するとともに、浜松市や流域住民等と連携した流域治水を推進し、安全で安心して暮らせる地域づくりに努めてまいります。

以上であります。

5.不登校児童生徒に対するきめ細かな支援について

【大 石】

 

岐阜市では、来年度の4月に、文部科学省の指定により、不登校児童生徒の実態に配慮した特別な教育課程を編成して教育活動を実施する「不登校特例校」として、公立の中学校が開校すると聞いた。

 

この中学校では、「あなたに学校が合わせる」をコンセプトに、個に応じたケアや学習環境の整備が、オーダーメイドで進められる。

不登校については、その要因や背景が複雑化、多様化していることから、有効な手立てを一律に講じることが非常に難しいことは、十分に承知しているが、この「不登校特例校」での試みのように、不登校状態にある児童生徒一人ひとりに合った学習機会を確保し、きめ細かな支援をしていくことが非常に大切である。

 

「不登校特例校」の設置も含め、本県における不登校児童生徒に対する支援について、県教育委員会の所見を伺う。

【教育長】

 

不登校児童生徒に対するきめ細かな支援についてお答えいたします。

 

本県の不登校児童生徒数は、令和元年度の調査では、公立小中学校で6,281人となっており、全国と同様に増加傾向にあります。学業の遅れや社会的自立へのリスクなどを考えますと、議員御指摘のとおり、個々の事情を考慮したきめ細かな支援が必要不可欠であります。各小中学校では、不登校の状況の改善や重篤化の防止に向けて、学級担任や養護教諭が中心となり、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーと連携し、不登校の子供やその家族に寄り添いながら、個別の支援計画を立て、別室登校や定期的な家庭訪問を行っております。

 

また、市町教育委員会では、学校以外の居場所として、適応指導教室の設置を進めております。現在、28の市町で43か所、計680人の児童生徒が通っており、教員OBなどによる学習支援や相談支援が行われております。

 

さらに、フリースクール等の民間施設との連携、ICT等を活用した家庭での個別学習などの支援を進める市町も増えており、こうした多様な学びの場におきまして、意欲や取組を認め、適切に評価することができるよう努めているところであります。

 

不登校特例校の設置につきましては、小中学校の設置者である各市町教育委員会が地域の実態に応じて判断することになりますが、不登校児童生徒の居場所の一つとなり、新たな教育機会が確保できることから、他県の取組や成果等を確認、分析した上で、各市町に情報提供をしてまいります。

 

県教育委員会といたしましては、引き続き、各市町教育委員会と連携しながら、不登校の未然防止に向けた「魅力ある学校づくり」を推進するとともに、不登校状態にある子供一人ひとりに合った学習機会の確保や学習環境の充実に努め、誰ひとり取り残さない教育の実現に向けて取り組んでまいります。

以上であります。

6.認知症高齢者の行方不明の現状と取組について

【警察本部長】

 

認知症高齢者の行方不明の現状と取組についてお答えいたします。

 

はじめに、認知症高齢者の行方不明の現状についてであります。

 

令和2年中に、県警察が届出を受理した行方不明者届のうち、認知症に係るものは202件であります。件数は前年と比べ6件減少したものの、全体に占める割合は13.8%と1.6ポイント増加し、統計をとり始めた平成24年以降、最も高い値となりました。

 

このうち、届出受理当日に発見されたものは73%にあたる148件、1週間以内に発見されたものは93%にあたる187件であります。

 

また、令和2年中に発見された197件のうち10%にあたる19件が亡くなられた状態で発見されています。

 

次に、認知症高齢者の早期発見に向けた取組についてであります。

 

認知症高齢者に関わる事案を認知した場合には、生命や身体に危険が及んでいるおそれがあることから、消防団や自治会などの関係機関と連携した行方不明者の捜索、警察犬を活用した追跡活動、全国への手配、市町の防災無線を活用した住民への情報提供の呼びかけ等、組織的な発見活動に努めております。

 

とりわけ、昨年4月からは、県が進める「SOSネットワーク広域連携制度」に基づき、警察署と市町との間で認知症高齢者等に係る情報の事前共有を行っております。

昨年浜松市では、警察官が臨場した際に、靴に貼り付けられた登録シールから身元が判明し、早期に御家族へ引渡しができた事例もございました。

 

また、県警察では、職員一人一人が認知症の特性を理解し、発見活動に役立てるため、市町の行う「認知症サポーター養成講座」の受講を進めているところであります。

 

県警察といたしましては、今後とも、県や市町など関係機関と緊密に連携し、行方不明者の早期発見に努めてまいります。

以上であります。